更新:2007/12/19

数と演算

 0 を含めた自然数 (Natural number) の集合 N0 := { 0, 1, 2, 3, 4, … } を考えるんだが、自然数とその和 + (足し算のこと) についての定義は書かない。ペアノの公理を書いてもなぁ。

 性質だけ書いておくと1. 0 との和をとっても不変、2. 順番を変えても不変。記号で書くと
  1. a + 0 = a [恒等],  2. a + b = b + a [可換]  (forall a,b in N0)

 さて、積 * (掛け算) を定義する。例えば 2+2+2=2x3 という具合だ。
  forall a1, a2, …, an, a, n in N0, n >= 1 に対して a1 = a2 = … = an = a のとき a * n := a1 + a2 + … + an
  特に a * 1 = a [恒等] となって、 n = 0 のときは a * 0 := 0 とする。

 * と + では * の方が優先順位が高いことにする。後で分数を考えた時のためだ。つまり (1+2)*3 = 3*3 = 9 となるが、1+2*3 = 1+6 =7 となる。

さて、これを見てくれ。怯えることはない。こいつははじめから死んでいる。

●●● = ●●
●●● ●●
●●
2 * 3 3 * 2
  
● ●● = ●●●
● ●● ●●●
2*1 + 2*2 2 * (1+2)

 つまりこうだ。
  a * b = b * a [可換],  a * (b + c) = a * b + a * c [分配法則]  (a, b, c in N0)

 逆に考えるんだ。まず和の場合の"変化なし" (恒等変換) は +0 だから
  forall a in N0, a + b = 0 となるような b を定義して b := -a とする。
 特に 0 + 0 = 0 だから -0 = 0 となるのだが、一般には -a は自然数ではないから、新しい数だ。そして、-a は a に対して唯一つだ。数学用語では一意的であるという。
 さらに -(-a) を考えると定義に従って -a + (-(-a)) = 0 なのだから -(-a) = a である。
 また、 -(a + b) を考えたら (a + b) + (-(a + b)) = 0 で両辺に (-a) + (-b) を加えて、 -(a + b) = (-a) + (-b) を得る。
 等式の両辺に同じ数を加えてもやはり等式、というのは加法は全単射だからなのだが、詳しくは書かない。
 a - b := a + (-b) と書くことにして、この演算を a と b のという。

 こうやって負の数というもの N- := {-1, -2, -3, …} を定義した。これに対して N+ := N0 / {0} = {1, 2, 3, …} を正の数と呼ぶ。そして全部合わせて Z := N- U N0 = {…, -2, -1, 0, 1, 2, …} を整数 (integer) と呼ぶ。

 さて、次は積の逆をやってみる。forall a in Z に対して a * b = 1 となる b を a-1 と書いて a の逆数と呼ぶ。
 この a-1 も一意的なのだが 1-1 = 1 であり、0 の逆数は存在しない。a = 0, 1 の場合以外には、これまた a-1 というのは新種の数だ。
 また、 (a-1)-1 = a となり、(a * b)-1 = b-1 * a-1 となる。確認してくれ。

 新種の数について考えるのだが、まず a/b := a * b-1 と書くことにする。特に a/1 = a * 1-1 = a * 1 = a
 次に a = d * m, b = d * n (d>0) のときを考えると a/b = m/n となる。これも確認してくれ。  
このような d := (a, b) を a, b の公約数という。d = 1 のとき、a, b は互いに素であるという。
 3/6 = 1/2 のように互いに素であるように書き換える操作を約分という。
 約分したものの集合 Q := { a/b | a in Z, b in N+ は互いに素 } の各要素を有理数 (rational number) という。ただし、 b はもちろん 0 ではなく、a/1 を単に a と書く。

 有理数での演算を考える。積については a/b * c/d := (a*c)/(b*d) とする。
 和については分配法則を利用して a/b + c/d := (ad + cb)/(b*d) とする。わかりにくいか。
 例えば 2/3 + 4/5 = (2*5 + 4*3)/(3*5) = (10 + 12)/15 = 22/15

 指数について書いてなかった。a1, a2, …, an, a in Z に対して a1 = a2 = … = an = a のとき an := a1 * a2 * … * an として、この n in N指数と呼ぶ。a0 := 1 としておく。さらに a-n := (a-1)n とすれば forall n in Z で定義できる。
  am * an = am+n,  (am)n = am*n

 やはり逆に考えてみる。だがまず a>0 だけを考える。n in Z として (am)n = a となる am > 0 を a1/n と定義する。
 xn = a となる x を a のn乗根という。特に n が奇数 (1,3,5,…) のとき a1/n だけだが、n が偶数 (2,4,6,…) のとき a1/n, -a1/n の2つある。
 さらに (am)1/n := am/n とする。これで a in N, n in Q に対して an が定義されたわけだ。
 例: 91/2 = 3, 8-2/3 = 1/4
 21/2 のようなものは有理数ではないニュータイプだ。これらを無理数 (irrational number) という。また有理数と無理数をあわせて実数 (real number) と呼ぶ。