きったんの頭

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微積分学

微積分学の導入

1.2 極限を使わない微積分学

次の項では微積分学のカギとなる考えを明らかにしていこう。この話は数字だけにすぎない—関数と傾きについては待て。その数字は特別なものではなく、なんでもよいだろう。重大なのは差をみることだ:

用意した数:ƒ =0 2 6 7  4 9
それらの差:v = 2 4 1 −3 5

差は間に書いてあり、2−0 = 2 、 6−2 = 4 、 7−6 = 1 という具合だ。

どのようにして 4 − 7 で負の数 -3 となるかに注意する。ƒ の数は増えたり減ったりして、その差 v は正にも負にもなりうる。これらの差を合計するとき、微積分学の背景となる考えが浮かんでくる:

2 + 4 + 1 − 3 + 5 = 9

差の合計は 9 だ。これは上の列(ƒ)の最後の数字である。これは偶然か、それともいつでも正しいのか? 早めに切り上げて 2 + 4 + 1 とすれば 7 だ。もう1つの例で試してみよう:

用意した数:ƒ =1 3 7 8  5 10
それらの差:v = 2 4 1 −3 5

ƒ を 1 ずつ増やしてみた。差は全く同じだ—変化なしだ。合計は 9 のままである。だが今度は ƒ は 10 だ。予想ははずれた、いつでも最後の ƒ を得られるのではない。

今回の最初の ƒ は 1 だ。 答え(差の合計)である 9 は 10 − 1 であり、 最後の ƒ 引く 最初の ƒ である。ƒ の中間をかえるとどうだろう?

用意した数:ƒ =1 5 12  7 10
それらの差:v = 4 7  −5 3

差を足すと 4 + 7 − 5 + 3 = 9 となる。10 − 1 のままだ。どのように ƒ を選んでも、いくつであっても、差の合計は最初の ƒ と最後の ƒ によって決まる。このことがいつでも正しいのなら、中間の ƒ が消えることの明確な理由があるに違いない。

T差の合計は (5 − 1) + (12 − 5) + (7 − 12) + (10 − 7) = 10 − 1 である。

5 が消え、12 が消え、7 が消える。10 − 1 だけが消えない。これが微積分学のカギなのだ!

1B ƒ の差を足し合わせると (ƒlast − ƒfirst) になる。


 
例 1
一次関数:ƒ =2 3 4 5 6 7
差が一定:v = 1 1 1 1 1

差の合計は確かに 5 だ。7 − 2 = ƒfast − ƒfirst に一致している。v の数字は一定の速度を思い出させる。f は直線 ƒ = vt + C を思い出させる。この例では v = 1 であり ƒ は 2 から始まっている。直線は ƒ = t + 2 となって生じる。

例 2
平方数:ƒ =0 1 4 9 16
差が一次関数:v = 1 3 5 7

1 + 3 + 5 + 7 は 4² = 16 に一致する。最初の j 個の奇数を足し合わせると j² になるという美しい事実がある。v は奇数であり、ƒ は完全平方数である。

j という文字は、ƒ の中で注目している数を表すのに便利なことがあるので知っておこう。この例で0番目の数は f0 = 0 でありj番目の数は ƒj =j² である。これは代数学の一部であり、数字の一覧の代わりになる ƒ の式だ。また j は注目している差を表すのにも使える。最初の v は最初の奇数 v1= 1 である。j番目の差はj番目の奇数 vj = 2j − 1 である。(従って v4 は 8 − 1 = 7 となる。) 0番目の奇数 v0 は無いので、差を j = 1 で始めるのがよい。

この書き方により、j番目の差は vj = ƒj − ƒ j-1 となる。j や j − 1 のような添え字にはそのうち慣れるだろうが、少し時間がかかるかも知れない。重要な点は v の合計が ƒlast − ƒfirst に等しいことだ。今度は v を傾きに、 ƒ を変域に結び付ける。

Linear increase in v = 1, 3, 5, 7. Squares in the distances f= 0, 1, 4, 9, 16.
[図1.7 直線的に増加する v = 1, 3, 5, 7. 平方数である距離 f = 0, 1, 4, 9, 16.]

図1.7は例2の簡単なグラフだ。v は奇数、ƒ は平方数である。v-グラフ と ƒ-グラフの重大な違いに注意。ƒ のグラフは折れ線グラフ("piecewise linear")である。ƒ の数値をとり、直線で結んだ。v のグラフは階段グラフ("piecewise constant")である。各区間で差は一定として描いた。これは距離 ƒ(t) が直線であり速度 v(t) が水平線であるときの距離と速度のグラフを思わせる。

今度は傾きと結びつける:

ƒ-グラフの傾きは 縦の距離 ⁄ 横の距離 = ƒ の増加量 ⁄ t の増加量 = v である。

各区間で t(横) の増加量は 1 である。ƒ(縦) の増加量は v と呼んでいる差のことだ。変化の割合は傾き v⁄1 つまりただの v だ。傾きは点 t = 1, 2, 3, ... で急に変わる。これらの特別な点においてƒ-グラフの傾きは定義されない。—各 v を水平線で結んだが、これはよく考える必要がある。 主要な考えは各点の間で ƒ(t) の傾きが v(t) であることだ

今度は面積と結びつける:

v-グラフの下側の面積は ƒlast − ƒfirst である。

この面積、図1.7の階段の下は複数の長方形で出来ている。各長方形の底は 1 である。高さは v だ。従って面積も v であり、総面積は v の合計である。その面積は ƒlast − ƒfirst となる。

より多くの場合にも正しい。開始時間、終了時間はいつでもよい—特に時間は t = 0, 1, 2, 3, 4 である必要はない。 t = 3.5 で止まることにする。最後の長方形 (v = 7) の面積は半分だけ数えることになる。総面積は 1 + 3 + 5 + ½ • 7 = 12.5 だ。これはやはり ƒlast − ƒfirst = 12.5 - 0 に一致する。この新たな終了点 t = 3.5 ではƒ-グラフの最後の部分の半分までしか行かない。9 と 16 の平均は 12.5 だ。

1C v は ƒ(t) の傾きである。v-グラフの下の面積は ƒ(tend) − ƒ(tstart) である。

これは微積分学の基本定理にほかならない。しかし代数学しか使っていなかった (曲線や極限を使っていない)。いまのところこの定理は折れ線状の ƒ(t) と階段状の v(t) の場合に制限されている。第5章でこの制限は打ち破られるのだ。

図1.7aによって 1 + 3 + 5 + 7 = 4² の解答が導かれることに注意する。点線の下の三角形は、階段状の4つの長方形と同じ面積になる。三角形の面積は ½⋅base⋅height = ½⋅4⋅8 であり、完全平方数 4² である。三角形が4個ではなくj個の場合は、面積は ½⋅j⋅2j =j² である。

次の例では別のパターンを紹介する。指数的に増加する場合と0の周りを振動する場合だ。気に入ってくれると良いが、 しかし学ぶ必要があるとは思わない。特に 2t や sin t や cos t のような関数だ。—階段状になる場合は除く。 微積分学の重要な関数を初めて見るが、代数学が必要なだけだ。ƒ のグラフが曲線であるとき、絶え間なく変化する速度に対して微積分学が必要になる。

最後の例は所得税にしよう。—まさに階段状 (step) になる。それから1.3節で曲線の傾きを紹介しよう。曲線への重大な一歩 (step) は極限を使うことだ。それは代数学から微積分学へと移行させるものである。

指数速度と距離

ƒ = 1,2,4,8,16 から始めよう。「2の累乗」である。0乗である 2º = 1 から始まる。指数は0ではなく1から始まる。j番目には 2 の因数は j 個になり、ƒj は 2j に等しい。 2j と j² と 2j との違いを見分けよう。 2j は直線、j² は平方、2j は指数的に増加する。j = 10 のとき 20 と 100 と 1024 になる。指数関数 2j は早くに他よりもかなり大きくなる。

ƒ = 1,2,4,8,16 の差はちょうど v = 1,2,4,8 である。同様のきれいな数字が得られる。 ƒ が 2 の累乗であるとき、v も 2 の累乗である。vj = 2j−1 という式は ƒj = 2j とは少し違う。最初の v が番号付きの v1 だ。 (それから v1 = 2º = 1 である。すべての数で 0 乗は 1 となる。ただし 0º は意味を成さない。) 図1.8の2つのグラフは同じ数字を使っているが、 ƒ は折れ線グラフになり、v は階段グラフになるため、違って見える。

The velocity and distance grow exponentially (powers of 2).
[図1.8 指数的に増加する速度と距離 (2の累乗)]

微積分学はどこに使われるのか?滑らかな曲線 ƒ(t)= 2t で使われるのである。この指数的増加は人口や預金額や国債に対して極めて重要だ。先ほどの試行から気づくかもしれない:v(t) は ƒ(t) に比例する。

一言 関数 2t は t² よりややこしい。f = t² の傾きは v = 2t だ。t に比例し t² には比例しない。ƒ = 2t の傾きは v = c2t であり、定数 c = .693 ... は6章までは出せないだろう。 (c は 2 の自然対数である。) 問題37は計算機で c を見積もっている—重要なのは定数であることだ。

振動速度と距離

速度が V 続いて −V となる前後運動を見た。これはもっとも単純な振動である。ƒ のグラフは直線的に上昇し、下降する。図1.9はまた別の0に戻る振動だが、軌道がもう少し面白い。

ƒ は今度は 0,1,1,0,−1,−1,0 の値をとる。ƒ6 = 0 から運動は始めに戻る。振動全体は繰り返される。

差 v は 1,0,−1,−1,0,1 だ。合計すると0になり、ƒlast − ƒfirst に一致する。ƒ と同様の振動である (そしてやはり繰り返される) が、時間はずれている。

ƒ-グラフは (大雑把に) 正弦曲線 (sine curve) に似ている。v-グラフは (より大雑把に) 余弦曲線 (cosine curve) に似ている。 本来の波形は滑らかな曲線だが、これらは "デジタル化"されている—デジタル時計は飛び飛びに進む。アナログからデジタルへの変化はコンピュータ革命を引き起こしたことは認めているだろう。同様の革命がCDで起こった。デジタル信号 (オフまたはオン、 0 または 1) はいつも優れているようだ。

区間 v や ƒ は t = 6 で再び始まる。普通の sine (サイン) や cosine (コサイン) は t = 2π で繰り返す。繰り返しの運動は周期的である—ここで「周期("period")」は 6 または 2π である。(t 度では周期は360度—円1周だ。 ラジアンで測ると、周期は 2π だ。実際にはいつもラジアンを使う—それは度の 2π/360 倍だ。) 時計には12時間の周期がある。文字盤に AM と PM がある場合には、その周期は  

Piecewise constant "cosine" and piecewise linear "sine." They both repeat
[図1.9 階段状の cosine と折れ線状の sine 。共に繰り返す。]

速度の瞬間的爆発

次の例は急発進する車だ。ƒ = 1 に着くまでは速度 V で、そこで急に止まる。ƒ のグラフは傾き V で上昇し、それから傾き0になる:

v(t)={Vup tot = Tƒ(t)={Vtup tot = T
0aftert = T1aftert = T

これは「関数記法("function notation")」の別の例である。一般の時間 t と特定の停止時間 T に注意する。距離は ƒ(t) だ。ƒ の変域 (代入値の集合) は t≥0 であるすべての時間だ。ƒ の値域 (返し値の集合) は 0≤ƒ≤1 であるすべての距離だ。

図1.10では3つの車—ジープとコルベットとマセラティを比較している。速度は異なるが、すべて ƒ = 1 となっている。従って v-グラフの下の面積はすべて 1 だ。長方形の縦は V で横は T = 1 ⁄ V となる。

Bursts of speed with VmTm = VcTc = VjTj = 1. Step function has infinite slope.
[図1.10 速度は VmTm = VcTc = VjTj = 1 と爆発的に増える。階段関数は無限大の傾きを持つ。]

任意の一言(optional remark) より速い速度、より険しい傾きついて考えるのは当然だ。 ƒ-graph はより短い時間で 1 に着く。極限の状態は階段関数で、このとき ƒ は真っ直ぐ上昇する。これは t = 0 までは 0 であり、t>0 のとき直ちに U = 1 へ飛ぶような1段(unit step) U(t) である。

階段関数の傾きはどうなる? 跳躍を除けば0だ。その t = 0 となる瞬間、傾きは無限大になる。通常の速度 v(t) は得られない—その代りに車をふっ飛ばす衝撃を得るのだ。そのグラフは1点上の t = 0 棘となり、δ de 表わされることが多い—それで階段関数の傾きはデルタ関数と呼ばれる。無限の棘の下の面積は 1 だ。

もちろんデルタ関数の定理など気にすることはない! 微積分学の対象は曲線であって、跳躍ではない。

最後の例は傾きと割合の現実世界への応用だ—「税はどのように作用するか」を説明する。特に税率と納税者層(tax brackets) と税額の違いに注意する。税率は v とし、 x の納税者層、税額は ƒ とする。

例3 所得税は折れ線になる。その傾きは税率 15%, 28%, 31% だ。

Xドルの課税所得者であるとする (Form 1040, line 37—控除をした後)。これらはアメリカ合衆国内国歳入庁 (IRS) による1991年度の指示だ:

最初の納税者層は 0 ≤ x ≤ $20,350 だ (IRSは記号≤を使ったことはないが、ここでは構わないだろう。我々はその意味を知っている。) 2番目の納税者層は $20,350 ≤ x ≤ $49,300 だ。最大の納税者層 x ≥ $49,300 は最高税率31%を支払う。しかしその納税者層で所得にその割合の税が掛けられるというだけだ。

図1.11は税率と納税者層と納税額を表している。それらは平均税率ではなく、限界税率 (marginal rate) だ。税額を総所得額で割れば平均税率になるだろう。28%や31%の限界税率はそれぞれ所得の超過分に税がかかる—点 x における傾きだ。税額は面積または距離に似ている—足し合わせたものだ。 税率傾きまたは速度に似ている—どこにあるかに依存する。これはニュース報道ではあまり明かされていないことだ。

The tax rate is v, the total tax is ƒ. Tax brackets end at breakpoints.
[図1.11 税率は v 税額は ƒ 。納税者層は区切り点まで。]

問題 最高納税者層の直線の方程式は何か? 答:税額が ƒ(x) = $11,158.50 のとき納税額者層は x = $49,300 で始まる。その傾きは税率31%だ。直線状の1点と傾きが分かれば、その方程式が分かる。これは強調してもよいほどに重要だ。

1D 最高納税者層の x について税額は ƒ(x) = $11,158.50 + .31(x &minus $49,300) である。

2.3節ではこの「1点-傾き方程式#1 ("point-slope equation")」を任意の直線に提供する。ここで特別な例を1つ見ることにする。$11,158.50という数字はどこから来たのか? それは中間納税者層の税額の終わりであって、最高納税者層の税額の始まりである。

図1.11もまた距離と速度の例を表している。t = 2 での距離は ƒ(2)= 40 となる。その後、傾きは時速60マイルとなる。従って、ƒ-グラフで傾き60をもつ直線の式は

ƒ(t) = 始めの距離 + 増えた距離 = 40 + 60(t − 2).

出発点は (2,40) だ。新たな速度60に、加わる時間 t − 2 を掛ける。1点-傾き方程式は道理にかなっている。ではこの節をコメントとともに復習していこう。

主要となる考え ƒ の任意の数で始める。それらの差は v である。差を合計すると ƒlast − ƒfirst となる。

下付き文字 (subscript notation) ƒ0, ƒ1, ... という数で最初の差は v1 = ƒ1 − ƒ0 だ。典型となる数は ƒj でj番目の差は vj = ƒj − ƒj-1 だ。差を足し合わせると (ƒ1 のような) 中間の ƒ がすべて消える:

v1 + v2 + … + vj = (ƒ1 − ƒ0) + (ƒ2 − ƒ1) + … + (ƒj − ƒj-1) = ƒj − ƒ0

ƒi = j または j² または 2j 。それから vj = 1 (定数) または 2j−1 (奇数) または 2j-1.

関数 ƒ を折れ線 (piecewise linear) になるようにつなげていく。すると傾き v は区間的に定数 (piecewise constant) になる。任意の tstart から任意の tend について v-グラフの下側の面積は ƒ(tend) − ƒ(tstart) に等しい。

単位 距離はマイル、速度は時速数マイル。税額はドル、税率は (支払うドル) ⁄ (稼いだドル)。税率は28%のように単位が無い。

1.2 演習

Read-through questions

Problems 1-4 are about numbers f and differences v.

Problems 5-11 are about linear functions and constant slopes.

Problems 12-18 are based on Example 3 about income taxes.

Problems 19-30 involve numbers ƒ0, ƒ1, ƒ2, ... and their differences vj = ƒj − ƒj-1 .They give practice with subscripts 0, ..., j.

Problems 31-34 involve periodic ƒ's and v's (like sin t and cos t).

Problems 35-42 are about exponential v's and ƒ's.

Problems 43-47 are about U(t) = step from 0 to 1 at t =0.