我々は、その解決のために微積分学が発明されることになった主要問題にたどり着いた。正反対の2つの問題がある。今後それらを見てもらいたい。
速度から距離を、距離から速度を出す。その2つが目標だ。—だが1つの節で終わりではない。微積分学は良い講座ではあるが、魔法ではない。最初の段階では、可能な限り最も安定した方法で速度を変化させる。
問 1 任意の時間 t について速度を v(t) = 2t とする。 ƒ(t)を求めよ。
v = 2t では、その加速度は一定である(2に等しい)と物理学者は言うだろう。運転手がアクセルを踏み、車が加速し、速度計が安定した値に上がる。距離も大きくなる。だんだん速く。t を秒で計り毎秒 v フィートとすれば、距離 ƒ はフィートで出る。10秒後の速さは毎秒20フィートになる。44秒後の速さは88フィート⁄秒(60マイル⁄時)になる。加速度はわかりやすいが、車はどれだけ進んだだろう?
問 2 任意の時間 t について進んだ距離が ƒ(t) = t² である。速度 v(t) を求めよ。
ƒ(t) = t² のグラフは図1.12の右にある。放物線だ。新車であれば、曲線は0で始まる。t = 5 で距離は ƒ = 25 になる。t = 10 まで行くとƒ は 100 に達する。
速度は時間で割った距離だが、速さが変わるとどうなるだろう? ƒ = 100 を t = 10 で割ると v = 10 となる。—最初の10秒間の平均の速さである。ƒ = 121 を t = 11 で割ると11秒間の平均の速さになる。しかし瞬間の速さはどうやって求めようか—きっちり t = 10 のときの速度計を読むのか?
[図1.12 速度 v=2t は1次。距離 ƒ=t² は2次。]
これを分かってもらいたい。車が速くなるにつれ、t² のグラフは険しくなる—時間ごとにより多くの距離を進むのだから。 The average velocity between t = 10 と t = 11 の間の平均の速さは t = 10 の瞬間の速さの十分な概数になる(だが概数にすぎない)。平均は容易に求められる:
t=10 での距離は ƒ(10)=10²=100 t=11 での距離は ƒ(11)=11²=121
平均速度は (ƒ(11)−ƒ(10)) ⁄ (11−10) = (121−100) ⁄ 1 = 21.
車はその1秒間で21フィート進んだ。その平均の速さは21フィート/秒だ。速さは徐々に増しているので、その時間内の始めの速さは21以下である。
幾何学的には、平均とは何だろう? それは傾きだが、曲線の傾きではない。平均速度は直線の傾きである。その線は図1.12の曲線の2つの点を結ぶ。平均を計算する時、速さは一定だとしている—したがって最も簡単な場合に帰着しているのだ。距離を時間で割ればよいだけだ:
平均速度 = ƒ の増加量 ⁄ t の増加量 (1)
微積分学とその法則 1:00に高速道路に入る。3:00に150マイル離れたところから出れば、 平均の速さは時速75マイルである。警官が違反キップを切れるかどうかは定かではない。裁判官に「いつ時速75マイル出していたのか」と言えるだろう。警官は分からないとを認めざるを得ないだろうが、確かに何度か時速75マイル出していたはずだと思うだろう。*
主要問題に戻る。—t = 10 の瞬間速度 v(10) を求める。次の区間までの平均速度は 21 だ。t = 10.0 と t = 10.5 の間の0.5秒間の平均速度を出すこともできる。距離の増加量を時間の増加量で割る:
{ƒ(10.5)−ƒ(10.0)} ⁄ (10.5−10.0) = {(10.5)²&minus(10.0)²} ⁄ .5 = (110.25−100) ⁄ .5 = 20.5.
20.5という平均値は t = 10 での速度により近い。まだ正確ではない。
v(10) を求めるには時間間隔を縮めることだ。これは2章の基礎であり、微分のカギである。曲線上でだんだん近づく点の間の傾きを求めよ。その「極限」が1点での傾きである。
代数学は t = 10 とその後の任意の時間 t = 10 + h との間の平均速度を与える。距離は 10² から (10 + h)² に増え、時間は h 増える。したがって商は:
vaverage = {(10+h)² − 10²} ⁄ h = (100 + 20h + h² − 100) ⁄ h = 20+h. (2)
この式は先ほどの微積分学に合っている。t = 10 から t = 11 の間隔は h = 1 であり、平均は 20 + h = 21 である。時間間隔が h = ½ のとき、平均は 20 + ½ = 20.5 だ。百万分の一秒間の平均は20足す1⁄1,000,000となる—これはほぼ20である。
結論: t = 10 での速度は v = 20 である。それは曲線の傾きだ。図1.12の左のv-グラフに一致し、また v(10) = 20 である。
では2つのグラフが任意の時間で一致することを示そう。ƒ(t) = t² ならば v(t) = 2t である。微積分学のカギとなる計算を見ていくのだが、式の前に言葉を挟む。時間 t + h での距離を計算し、t での距離を引き、h で割る。これで平均速度が出る:
vave = {ƒ(t+h) − ƒ(t)} ⁄ h = {(t+h)² − t²} ⁄ h = (t² + 2th + h² − t²) ⁄ h = 2t + h. (3)
これは先ほどの t を 10 とした計算と合う。平均は 20 + h だった。さて今は平均が 2t + h だ。速度が変化しているので、時間間隔 h に依存する。しかし h が 0 に近づくとどうなるか見ることができる。平均は速度計の値に近づいて行き、時計が時間 t を指し示すその瞬間には 2t となる:
1E h が 0 に近づくと、平均速度 2t + h は v(t) = 2t に近づく。
注意 計算式(3)は微積分がどのように代数学を必要とするか示している。v-グラフ全体が欲しいならば、時間を「変数」としなければならない。それは文字 t で表す。数値は特定の時間 t = 10 間隔 h = 1 で十分だ—しかし代数学はそれを超えている。任意の時間 t と任意の t + h の間の平均速度は 2t + h だ。文字に数値を代入することをためらわないでほしい—代数学の確認である。
代数学を超える一歩でもある!微積分学は平均の極限を必要とする。h が 0 に収縮するにつれ、グラフ上の点は近づいていく。「間隔の平均速度」は 「瞬間速度」になる。極限の一般的な定理はそれほど単純ではないが、ここでは必要でない。 (それほど難しくもない。) この例では極限値は簡単に求まる。h → 0 のとき、平均 2t + h は 2t に近づく。
この節で何をやり残しているか? 問2には答えた—距離から速度を求めた。問1に答えていない。v(t) = 2t が時間について直線的に増加するとき、距離はどうなるか? これは逆の方向に向かっている (積分である)。
微積分学の基本定理によると新たな議論は必要ない。ƒ(t) の傾きが v(t) であるならば、逆にv-グラフの下の面積がƒ-グラフになる。ƒ = t² を示す走行距離計は v = 2t を示す速度計を生み出す。基本定理によれば、 2t の下の面積は t² となるはずだ。しかし基本定理については何も解いていないので、実際に面積を計算する方が安心だ。
幸い、その面積は三角形だ。底辺は t で、高さは v = 2t だ。面積は ƒ(t) に一致する:
面積 = ½(底辺)(高さ) = ½(t)(2t) = t². (4)
例 1 グラフの時間を移動させる。車は t = 1 まで出発しない。それゆえその時まで v = 0, ƒ = 0 だ。出発した後は v = 2(t−1), ƒ = (t−1)² となる。遅延時間 1 がどのように式に入るかを見る。図1.13はグラフにどう影響するかを示している:
[図1.13 遅延した速度と距離。v = at + b と ƒ = ½at² + bt の組。]
例 2 加速度を 2 から他の定数 a に変える。速度は v = 2t から v = at に変わる。加速度は速度曲線の傾きである! 距離は a にも比例するが、½に注意する:
加速度 a ⇔ 速度 v = at ⇔ 距離 ƒ = ½at².
a が 1 ならば v = t, ƒ = ½t² である。それは微積分学でもっとも有名な組み合わせだ。a が重力定数 g ならば v = gt は落体の速度である。この速さは質量に依存しない (ピサの斜塔でガリレオが試した)。おそらく彼は速さ v = gt よりもっと簡単に距離 ƒ = ½gt² を見た。とにかく、これは物理で最も有名な組み合わせだ。
例 3 ƒ(t) = 3t + t² とする。t から t + h の平均速度は
vave = {ƒ(t+h) − ƒ(t)} ⁄ h = {3(t+h) + (t+h)² − 3t − t²} ⁄ h.
距離の増加量は 3h (3(t+h) 引く 3t から来ている) だ。速度は 3 (3h 割る h から来ている) 増加している。3t が距離に加えられ、3 が速さに加えられる。もしガリレオが物体を落とす代わりに投げたのであれば、初期速度 v0 は距離に v0t を加える。
傾きの概念は難しくない—1直線について。ƒ の増加量を時間の増加量 t で割る。2章では、y の増加量を x の増加量で割る。経験によると、直線が動くと傾きがどうなるかを見ることは難しい。
図1.14aは曲線上の点 A と B を結ぶ直線を表している。これは「正割直線("secant line")」だ。その傾きは平均速度だ。微積分学がすることは点Bを曲線に沿ってAに持ってくることだ。
[図1.14 直線の傾き、曲線の傾き。2つの速度グラフ。どっちがどっち?]
問 1 BがAよりも上にあるとき「ƒ の増加量」はどうなるか?
答 ƒ の増加量は 0 に減少する。t の増加量も同様。
問 2 BがAに近づくと、傾きは増えるか減るか?
答 この問には答えない。重要すぎる。BがAに近づく別の正割直線を描き、その傾きを比べよ。
この問はワシントン大学のスティーブ・モンク (Steve Monk) によって作られたものだ—大学では57%の正答率だった。約97%が式から正しい傾きを出した。図1.14bは反対の問題を示している。速度は分かっているが、距離は分からない。しかし微積分学は両方の関数についての問に答える。
問 3 t = 3/4 ではどちらの車が速くなるのか?
答 車Cは速さが大きい。車Dは加速度が大きい。
問 4 車が同時に出発したら、Dは最後にはCに追いつくか? t = ½ と t = 1 の間で車は近づくか離れるか?
答 これにはクラスの過半数が間違えた。何故だか分かるだろう。速度グラフを見て距離グラフを想像しなければならない。車Cが速くなるとき、車間距離は .
繰り返し:車は同時に出発するが、同時に到着しない。t = 1 で同じ速度に達するが、同じ距離ではない。車Cはより速くなった。距離グラフをぜひとも描くべきだ。それがどう曲がるかを見るために。
これらの問題はもう一つの点を強調する助けになる。速度 (または傾き) を出すことは距離 (または面積) を出すこととは全く違う。
v(t)を求めるには距離の短い記録で十分である。点Bは点Aへ動く。傾きの問題は局所的である—速度は点Aの近くの ƒ(t) により完全に決まる。
逆に、全距離を求めるのに速度の短い記録では不十分である。先に走行距離を知らなければならない。さもないと距離の全体ではなく、距離の増加量しか知ることができない。