確率 1
離散確率。用語の定義とちょっとした例。
2008-06-16
INDEX
- 標本空間 Ω
- 事象 A
- 確率 P(A)
- 余事象 AC
- 和事象 A∪B
- 積事象 A∩B
- 排反 A∩B = φ
- 独立 P(A∩B) = P(A)P(B)
- 条件付き確率 P(A|B) := P(A∩B)/P(B)
- 確率変数 X
- 期待値 E(X) := Σnk=1 xkpk
- 分散 V(X) := E({X−E(X)}2)
- 標準偏差 √V(X)
- 共分散 Cov(X,Y) := E[{X−E(X)}{Y−E(Y)}]
- 相関係数 ρ(X,Y) := Cov(X,Y)/(√V(X)√V(X))
- ベルヌーイ分布 X ~ Be(p), P(X=0) = 1−p, P(X=1) = p
- 2項分布 X ~ B(n,p), P(X=k) = nCkpk(1-p)n-k [k=0,1,2,…,n]
- 再生性 X ~ Be(p), P(X=0) = 1−p, P(X=1) = p
- 幾何学分布 X ~ Ge(p), P(X=k) = p(1−p)k [k=0,1,2,…]
- ファーストサクセス分布 X ~ Fs(p), P(X=k) = p(1−p)k−1 [k=1,2,…]
- 負の2項分布 X ~ NB(n,p), P(X=k) = n+k−1Cn−1pn(1−p)k [k=0,1,2,…,n]
- ポアソン分布 X ~ Po(λ), P(X=k) = λke−λ/k! [k=0,1,2,…]
基礎用語の定義
起こりうるすべての集合を標本空間といい、Ωで表す。また、標本空間の部分集合を事象といい、事象Aが起こる確率をP(A)で表す。確率とは以下の性質を満たす写像。
- 0 ≦ P(A) ≦ 1
- P(Ω) = 1
- A∩B = φ ⇒ P(A∪B) = P(A)+P(B)
例:サイコロを1回投げて、偶数の目が出る確率を考える。
標本空間は Ω = { 1,2,3,4,5,6 } である。事象を A := { 2,4,6 } とおく。求める確率は P(A) = 3/6 = 1/2 となる。 ■
事象Aの補集合AC (つまりAが起こらないこと) をAの余事象という。 また、A∪Bを和事象、A∩Bを積事象といい、A∩B = φ のときA,Bは互いに排反であるという。 P(A∩B) = P(A)P(B) であるときA,Bは互いに独立であるという。
P(B) > 0 のとき条件付き確率を P(A|B) := P(A∩B)/P(B) と定義する。 P(A|B) = P(A) ⇔ A,Bは互いに独立
標本空間の元ωに実数X(ω)を対応させる関数Xを確率変数という。A = { ω | X(ω) = x } は1つの事象であり、この X=x となる確率 P(A) を P(X=x) とも書く。
確率変数Xの分布が
であるとき、期待値を E(X) = Σnk=1 xkpk で定義する。このとき、確率変数X,Yと定数aに対して次が成り立つ。
- E(X+Y) = E(X)+E(Y)
- E(aX) = aE(X)
- E(a) = a [特に E(E(X))=E(X)]
- X,Yが独立[P(X=x,Y=y) = P(X)P(Y)] ⇒ E(XY) = E(X)E(Y)
また、分散を V(X) := E({X-E(X)}2) で定義し、その平方根 √V(X) を標準偏差という。
- V(aX+b) = a2V(X)
- V(a) = 0
- V(X) = E(X2)−E(X)2
- X,Yが独立 ⇒ V(X+Y) = V(X)+V(Y)
例:次の確率分布において p, E(X), V(X), E(2X) を求める。
全確率は1なので 1/6+2/6+p = 1 ∴p = 3/6 = 1/2 定義どおりに E(X) = 0・1/6+1・2/6+2・3/6 = 4/3 また E(X2) = 02・1/6+12・2/6+22・3/6 = 7/3 だから V(X) = E(X2)−E(X)2 = 7/3−(4/3)2 = 5/9 ■
例:X,Yが独立でE(X)=1,V(X)=2,E(Y)=3,V(Y)=4のとき次を求める。(1)E(2X+3Y) (2)V(4X−5Y) (3)E[(X+Y)2] (4)Xの標準化:E(X−a/b)=0, V(X−a/b)=1 となるa,b
E(2X+3Y) = 2E(X)+3E(Y) = 2・1+3・3 = 11 —(1)
V(4X−5Y) = 42V(X)+(-5)2V(Y) = 16・2+25・4 = 132 —(2)
E[(X+Y)2] = E(X2)+E(2XY)+E(Y2) = V(X)+E(X)2+2E(X)E(Y)+V(Y)+E(Y)2 = 2+12+2・1・3+4+32 = 22 —(3)
E(X−a/b) = (E(X)−a)/b = 0 より a=1, V(X−1/b) = V(X)/b2 = 1 より b=±√2 —(4) ■
共分散を Cov(X,Y) := E[{X-E(X)}{Y-E(Y)}] で定義する。
- Cov(X,X) = V(X), Cov(X,Y) = Cov(Y,X)
- Cov(X1+X2,Y) = Cov(X1,Y)+Cov(X2,Y)
- Cov(X,Y) = E(XY)−E(X)E(Y)
- V(X+Y) = V(X)+2Cov(X,Y)+V(Y)
- XとYが独立 ⇒ Cov(X,Y) = 0
相関係数を ρ(X,Y) := Cov(X,Y)/(√V(X)√V(Y)) と定義する。
- -1 ≦ ρ(X,Y) ≦ 1
- ac > 0 ⇒ ρ(aX+b, cY+d) = ρ(X,Y)
確率分布
次のようなXの分布をパラメータp(0<p<1)のベルヌーイ分布といい、X ~ Be(p) と表す。
このとき、E(X) = 0・(1−p)+1・p = p, E(X2) = 02・(1−p)+12・p = p
従って、V(X) = E(X2)-E(X)2 = p-p2 = p(1−p)
より一般に P(X=k) = nCkpk(1−p)n−k [k=0,1,2,…,n] のとき2項分布といい、B(n,p) と書く。B(1,p) = Be(p) である。
- Xi~Be(p), 各Xiは独立 [i=1,2,…,n] ⇒ X1+X2+…+Xn ~ B(n,p)
- X~B(n,p) ⇒ E(X) = np, V(X) = np(1−p)
- X,Yが独立で、X~B(m,p), Y~B(n,p) ⇒ X+Y ~ B(m+n,p) [再生性という性質]
確率 p で成功、確率 1−p で失敗という試行を独立に繰り返すとき、
- 最初の成功までの失敗数Xの分布を幾何学分布であるといい、X~Ge(p)と書く。P(X=k) = p(1−p)k [k=0,1,2,…], E(X) = (1−p)/p, V(X) = (1−p)/p2
- 最初の成功までの試行数Xの分布をファーストサクセス分布であるといい、X~Fs(p)と書く。P(X=k) = p(1−p)k−1 [k=1,2,…], X~Fs(p) ⇔ X−1~Ge(p)
- n回成功するまでの失敗数Xの分布を負の2項分布であるといい、X~NB(n,p)と書く。P(X=k) = n+k−1Cn−1pn(1−p)k [k=0,1,2,…,n]
Xi~Ge(p), 各Xiは独立 ⇒ X = X1+…+Xn ~ NB(n,p) だから E(X) = n(1-p)/p, V(X) = n(1-p)/p2
P(X=k) = λke−λ/k! [k=0,1,2,…] のときポアソン分布といい、X~Po(λ)と書く。E(X) = V(X) = λ