きったんの頭

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微積分学

微積分学の導入

1.5 三角比の概論

三角比は直角三角形から始まる。その三角形の大きさは角度ほど重要ではない。特定の角度—それを θ と呼ぶ—および3辺 x, y, r の割合に焦点を当てる。その割合は三角形の大きさを変えても変化しない。これらの辺は三角関数の基礎となる6つの割合を与える:

Fig. 1.19 cos θ, sin θ, tan θ
[図1.19]

もちろんこれら6つの割合は独立していない。右側の3つは直接左側の3つから出てくる。それからタンジェント (tangent) はサインをコサインで割ったものだ:

tan θ = sin θ ⁄ cos θ = (y/r) ⁄ (x/r) = y ⁄ x

「角のタンジェント ("tangent of an angle")」と「円に接する ("tangent to a circle")」と「グラフの接線 ("tangent line to a graph")」は同じ単語の異なる使い方であることに注意。θ のコサインが 0 に行くとき、θ のタンジェントは無限大に行く。辺 x が 0 になり、θ は 90° に近づき、三角形は無限の傾斜になる。90°のサインは y/r = 1 である。

三角形は重大な極限を持つ。90°までよく、180°までは大丈夫だが、そのあとは駄目だ。三角形の中に240°の角を置くことは出来ない。したがって今度は円に変えることにする:

Fig. 1.20 Trigonometry on a circle. Compare 2 sin θ with sin 2θ and tan θ (periods 2π, π, π).
[図1.20 円での三角比。2 sin θ を sin 2θ や tan θ と比べる (区間は 2π, π, π)。]

角度はx軸の正の方から (反時計回りに) 測る。従って90°は真上であり、180°は左、360°は0°と同じ向きだ。 (それから450°は90°と同じ。) それぞれの角度は半径 r の円周上に点を作る。その点の x と y の座標は負になり得る (r は決してなり得ない)。点が円周を動くとき、6つの割合 cos θ, sin θ, tan θ, ... はグラフをなぞる。コサイン曲線とサイン曲線は同じである—ただ90°動かしただけだ。

もう一つの違いは円での動きにある。度は外す。ラジアンを入れる。円1周の距離は 2πr だ。別の点までの円周上の距離は θr だ。角度を θ の倍数で測る。半円の距離は πr だから角度は πラジアン—180° になる。四半円はπ/2ラジアンあるいは90°だ。角度 θ までの距離は r 倍の θ である。

r = 1 のときはごく簡単だ: 距離は θ である。45°は円の1/8であり2π/8ラジアンだ—そしてその弧の長さは 2π/8 だ。1°と同じもの:

360° = 2πラジアン   1° = 2π/360ラジアン   1ラジアン = 360/2π°.

時計回りの動きは負である。-π/3 は -60°であり円周の逆方向の 1/6 だ。6つの関数の効果は何か?

もちろん -θ に行くとき半径 r は変わらない。x も変わらない (図1.20aを参照)。しかし y の符号は変わる。+θ が軸の上であるとき、-θ は軸の下だから。この y の変化は y/r と y/x に影響するが、x/r には影響しない:

cos(-θ) = cos θ   sin(-θ) = -sin θ   tan(-θ) = -tan θ.

コサインは偶関数 (変化なし)。サインとタンジェントは奇関数 (符号が変わる)。

同じ点は正の方向の5/6だ。従って2πラジアンの5/6 (つまり300°) は同じ方向に -π/3ラジアンつまり-60°を与える。 2πの違いによって x, y, r に違いが出ない。sin θ と cos θ と他の4つの関数は 2π 周期だ。5回も100回も円をまわる (角度に 10π または 200π 加える) ことができ、6つの関数は繰り返される。

  θ = 2π/3 (または θ = -4π/3) における6つの三角関数を求める。この角は図1.20a (r = 1) に示している。その割合は

cos θ = x/r = -1/2   sin θ = y/r = √3/2   tan θ = y/x = -√3
sec θ = -2   csc θ = 2/√3   cot θ = -1/√3

これらの数は4つの関数の大きさについての基礎的な事実を説明する:

|cos θ| ≤ 1   |sin θ| ≤ 1   |sec θ| ≥ 1   |csc θ| ≥ 1

θ = 1/tan θ である限り、タンジェントとコタンジェントはどこにでも下がる。

より多くのことが分かる。タンジェント -√3 はサインとコサインの比だ。セカント (正割:scant) -2 は 1/cos θ だ。それらの2乗は 3 と 4 だ (1 違っている)。そうは思えないかもしれないが、これは注目すべきことだ。これら6つの数値の2乗には3つの関係がある。それらは三角比の重要な独自性である:

cos² θ + sin² θ = 1   1 + tan² θ = sec² θ   cot² θ + 1 = csc² θ

すべてピタゴラスの定理 x² + y² = r² から来ている。r² で割ると (x/r)² + (y/r)² = 1 だ。これは cos² θ + sin² θ = 1 だ。x² で割ると2つめの独自性 1 + (y/x)² = (r/x)² となる。y² で割ったのが3つめだ。3つとも本書全体を通して必要になる—そして1つめは忘れるわけにはいかない。

距離と加法定理

ピタゴラスの定理を使って2点の間の距離を計算する。図1.21aの点だ。x と y の座標がわかっており、d は間の距離である。3つめの点は直角三角形となるように決める。

底辺に沿った x の距離に助けは必要ない。x2−x1 (または距離は負になり得ないので |x2−x1|) だ。縦の距離は ly2−y1| だ。ピタゴラスの定理ですぐに出る:

2点間の距離 = d = √{(x2−x1)²+ (y2−y1)²}.   (1)

Fig. 1.21 Distance between points and equal distances in two circles.
[図1.21 2点間の距離と2つの円の等しい距離]

2つの同じ円にこの距離公式を当てはめると、s−t のコサインが求まる (角度を引いていることが重要)。図1.21bで距離の2乗は

d² = (x の増加量)² + (y の増加量)² = (cos s − cos t)² + (sin s − sin t)².   (2)

図1.21cは同じ円と三角形 (ただし回転している) を表している。同じ距離の2乗は

d²= (cos(s−t)−1)² + (sin(s−t))².   (3)

さて方程式(2)と(3)の2乗を展開する。(cosine)² + (sine)² が現れたら 1 で置き換える。距離は同じなので (2) = (3) だ:

(2) = 1 + 1 − 2 cos s cos t − 2 sin s sin t
(3) = 1 + 1 − 2cos(s−t)

1 + 1 それから -2 を消したら cos(s−t) についての「加法定理 (addition formula)」を得る:

s−t のコサインは cos s cos t + sin s sin t   (4)
s+t のコサインは cos s cos t − sin s sin t   (5)

もっとも簡単なのは t = 0 だ。そのとき cos t = 1, sin t = 0. 方程式は cos s = cos s となる。

すべての場合に(4)から(5)を導くには、t を -t で置き換える。cos t に変化はないがサインに"−"が付く。s = t という特別な場合には cos(t + t)= (cos t)(cos t) − (sin t)(sin t) となる。これはよく使われる cos 2t の公式だ:

倍角の公式 cos 2t = cos² t − sin² t = 2 cos² t − 1 = 1 − 2 sin² t.   (6)

cos² t + sin² t = 1 はサインとコサインを切り替えるためにいつも使う。

s−t と s + t と 2t のサインのために加法定理と倍角の公式も必要だ。これは (sine)² と (cosine)² よりむしろ sine と cosine を関係づける。元の三角形の割合 y/r にもどる。この割合は角 θ のサインであり、また補足的な角 (complementary angle) π/2 − θ のコサインでもある:

sin θ = cos(π/2−θ)   and   cos θ = sin(π/2−θ).   (7)

2つの角を足すと π/2 (直角) なので補足的な角は π/2−θ だ。問19でこの関係を作ることで、公式(4-5-6)はコサインからサインに移る:

sin(s−t) = sin s cos t − cos s sin t   (8)
sin(s+t) = sin s cos t + cos s sin t   (9)
sin 2t = sin(t + t) = 2 sin t cos t   (10)

これら10の公式でやめたいと思う。まだもっと可能だが。三角比はその6つの関数を関係づける独自性に満ちている—それらの関数は根本的にはひとつの直角三角形から来ている。x, y, r の割合と方程式 x² + y² = r² は様々に書かれ得る。しかし微積分学に必要な公式はもう見た。* それらは2章で導関数を、5章で積分を与える。そしてそれ自体の何か—角が0に近づくときの極限を加えることが典型的な主題だ。微積分学の本質はそれの極限にある。

式の復習   図1.22は d² = (0−½)² + (1−√3/2)² を示す。

cos π/6 = cos π/2 cos π/3 + sin π/2 sin π/3(s − t)sin π/6 = sin π/2 cos π/3 − cos π/2 sin π/3
cos 5π/6 = cos π/2 cos π/3 − sin π/2 sin π/3(s + t)sin 5π/6 = sin π/2 cos π/3 + cos π/2 sin π/3
cos 2(π/3) = cos² π/3 − sin² π/3(2t)sin 2(π/3) = 2 sin² π/3 cos² π/3
cos π/6 = sin π/3 = √3/2 (π/2 − θ) sin π/6 = cos π/3 = 1/2

Fig. 1.22
[図1.22]

1.5 EXERCISES

Read-through questions